2013年09月11日
新しいカウンセリングの実際のプロセス、実践方法 376
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新しいカウンセリングの実際のプロセス、実践方法を述べます。
不登校、引きこもりの人は、自然な気持ちの流れが妨げられているのです。
よってカウンセリングを通して子供は、親の一面的な見かたから解放されることが大切です。
その結果、生産的な親子関係がスタートします。
その生産的な関係性の確立のための、カウンセリングの目標設定についてモデルにより述べます。
このモデルは、「子育てに自信の持てない母親」です。
「子育てに自信の持てない」という、きわめてカウンセリングの目標設定の困難なケースです。
新しいカウンセリングでは目標設定と、その母親のサポートを同時に行います。
この母親は「育児ノイローゼ」状態です。
子育てに絶望感を持っています。
このようなカウンセリングの目標設定の困難なケースを、モデルにより述べます。
小学校2年生の女の子と、その母親とのカウンセリングです。
この母親も、子供の問題行動からカウンセリングにきました。
問題行動は、カウンセリングに対する導きです。
その問題行動とは、「学校の先生の言うことを聞かない」というものです。
このことには母親も、困っていました。
この母親は、あまりにも子供が言うことを聞かないので自分に自信を失ってしまったのです。
その結果、「自分は母親失格かもしれないという考えに支配された」きわめて困難な状況にいました。
新しいカウンセリングの実際のプロセスは、より具体的な解決を目指します。
それゆえにカウンセラーは、こう質問しました。
「どんなことが起きたら、今日カウンセリングを受けてよかったと思えますか?」
それに対して母親は、「あまりにも子供が言うことを聞かない」と繰り返すのでした。
そして乳幼児のころからの、子供の困ったことを語りました。
まったく質問には、答えていません。正確には気持ちの混乱ゆえに、答えられないのです。
カウンセリングでは気持ちの混乱で質問に答えられないときは、そのまま話を続けます。
多くの場合、「質問に答えてください」とは言いません。これは話の流れを、質問の回答よりも、重視するからです。
そのためにカウンセラーは、話を聴く姿勢が大切です。
母親に対して理解を示しあたたかく、話を聴く姿勢が求められます。
カウンセラーが母親に対して理解を示し、あたたかく話を聴く姿勢を保つだけでも大きな効果はあります。その姿勢だけでも相手(母親)に、大きな変化をもたらします。
人は誰でも、理解を求めているのです。
それをカウンセリングでは、あたたかく話を聴く姿勢により相手に示します。
そのあたたかく話を聴く姿勢により、理解されたときに、その人は前向きな生き方に向かいます。
この母親も、そうでした。
ここまでの会話は、あたたかく話を聴く姿勢を相手に示すためのものです。
ここからカウンセリングの目標設定という、本題に入ります。
そのためにカウンセラーは、次のような質問をしました。
「娘さんが、お母さんの言うことを聞くようになったら、何がどのように変わりますか?」
それに対して、母親はこう答えました。
「考えられません。」
絶望感の強い人ほど、こう答えます。
そこでカウンセラーは、次のように語りました。
「先ほどのお話から、あなたをとても良いお母さんだとおもいました。」
この言葉により、真に相手を尊重するのです。
真に相手を尊重することにより、絶望から相手を引っ張りあげるのです。
母親は、この言葉に微笑みました。
考えも、なめらかに進んでいるようです。
そして、母親はこう答えました。
「娘は私を、もっとお母さんとしてフレンドリーに対応するでしょう。」
さらに続けて、こう述べました。
「私は娘に、もっと母親らしく対応するでしょう。」
母親は自分と娘がそれぞれ母らしく、娘らしく生きられると述べています。
そこでカウンセラーは、それを次のような質問により具体化します。
「そうなったら、具体的にどうしますか?」
それに対して、母親はこう答えました。
「もっと、娘に微笑みます。」
カウンセラーは、それをより具体化するために次の質問をしました。
「娘さんに微笑んだら、娘さんはどのようにいまと変わりますか?」
母親はこう答えました。
「娘はソフトに、微笑み返します。」
「そうやって私達は、フレンドリーになっていきます。」
「・・・・・・・・そう、私達に信頼感が育まれるでしょう。」
母親にとってフレンドリーになることは、信頼感が育まれることとほぼイコールです。
カウンセラーは、それを視点をかえるために次の質問をしました。
「信頼感が育まれたらお母さんと、娘さんはどのようにいまと変わりますか?」
母親は少し考えて、次のように答えました。
「もっと自信が持てるでしょう。」
それに続けて、母親はこう延べました。
「娘は、もっと自分に自信が持てるでしょう。」
「娘は、自信がないのでしょう。」
「だから、破壊的になるんでしょう・・・」
多くの場合、自分に対する自信の弱さは破壊的な行動に至ります。
言いかえれば生きられなさは、自信の弱さにゆらいします。
自信がないから、「やけの、やんぱち」なのです。
すべて投げやりなのです。
このような大きな、一つの結論に達したのです。
カウンセリングの、大きな一つの節目です。
このケースでも一つの結論、大きな一つの節目に至るようにカウンセリングは行われました。
それはもともと可能性として、この母親の中にあるものです。
可能性として、母親の中にあるものを開示することも大切です。
それと同時に母親と子供の、橋渡しも必要です。
この橋渡しには、一つの質問が有効です。
それは橋渡しを視覚化して、スムーズなものにします。
子供用に、少しアニメのような要素もあります。
それは魔法の杖を使う、質問です。
その魔法の杖を使う質問を、子供にしました。
それは、次のようなものでした。
「ここに魔法の杖が、あります。」
「魔法によりどんな望みも、かなえることのできる杖です。」
こうやって、子供に視覚イメージを与えます。
「お母さんもともに、魔法の杖を使いましょう。」
この言葉により母親も、視覚イメージによる解決に参加するのです。
子供のカウンセリングでは、家族の参加はとても大切です。
そもそも子供の不登校や引きこもりは、家庭生活がスムーズに進まないことが原因です。
それがスムーズに進むための、助走がカウンセリングです。
それは走り幅跳びの、助走と同じです。
カウンセリングという助走をつけて、家庭生活をスムーズに跳ぶのです。
この「お母さんもともに、魔法の杖を使いましょう」という言葉に
続けて、魔法のお話はスタートします。
「この魔法の杖は、どんな望みもかなえてくれます。」
「魔法の杖を、いまから振ります。」
そうやって、魔法の杖を振るしぐさをします。
ここから、本題に入っていきます。
その魔法の杖を振るしぐさと同時に、相談者は魔法のストーリーの中に入るのです。
ストーリーは、こうスタートします。
「この魔法の杖は、どんな望みもかなえてくれます。」
「もし明日の朝に目がさめて、あなたがいま話した嫌なことが消えてなくなっていたら、そのことにどんなことから気付くでしょう?」
このように先ず解決像を、示すのです。
そこから解決を、さかのぼっていくのです。
その解決像に対する、子供の回答は次のものです。
「ぜんぜん、わからない・・・」
これに対して隣にいた母親はいらだち、こう述べました。
「分からないわけ、ないでしょ!!!」
この母親の言葉の中に、子供の問題行動の原因は潜んでいます。
感情的な対応こそが、その原因です。
感情的ないらだちは、子供の不安をうみます。
その結果、悪循環に入るのです。
そこでカウンセラーは母親のいらだちによる、子供の不安を静めるためにこう述べました。
「わからなくて、いいんですよ。」
この言葉により、子供は安心しました。
カウンセリングでは多くの場合、安心感を与えればそれだけでOKです。
これは大きな体験です。
その体験に背中を押されて、前に進むのです。
この子も「わからなくて、いいんですよ」という言葉に背中を押されて、前に進みました。
小さなことですが、これだけでも大切なカウンセリングです。
続けて、次のように述べました。
「カーテンを開けて、そとを見る。」
これは「もし明日の朝に目がさめて、あなたがいま話した嫌なことが消えてなくなっていたら、そのことにどんなことから気付くでしょう?」という質問に直接、答えていません。
これに対して隣にいた母親はいらだったかもしれませんが、何も言いませんでした。
これはとても、意味のあることです。
母親も先ほどのカウンセラーの、「わからなくて、いいんですよ」という言葉から、子供とともに安心を実感していたのです。このようにカウンセリングでは、安心感を与えればそれだけでOKであることは多いのです。
その安心感のもとに、この子は語りました。
「明日の朝に目がさめたら、買いたかったCDがあるかなと・・・思います。」
それに対して、カウンセラーは微笑みました。
イエスと、相手を肯定するジェスチャーです。
その微笑みのジェスチャーのもとに、さらにこの子は語りました。
「それに明日の朝、みんなで楽しくご飯を食べられる・・・」
これは多くの不登校や引きこもり状態にある人の、望みです。素直な気持ちです。
これを引き出せただけでも、大きな効果はあります。
カウンセラーはさらに、その望みを広め深めなければいけません。
そのために、次の質問をしました。
「みんなで楽しくご飯を食べられたら、あなたはどんな気持ちになるの?」
「どうかな?」
その質問に、この子は語りました。
「朝から、すごく気ぶんがいい!!!」
カウンセラーはさらに、カウンセリングを横に広めるために、次の質問をしました。
「あなたはいつも、気ぶんがいいとき何をしているの?」
この子は、こう述べました。
「妹と、仲良く遊んでる!!!」
この子は気ぶんもいいときは、「妹と仲良く遊んでる」のです。
そのことを本人も母親も知ってはいますが、じゅうぶんに気付いていないのです。
すなわち母親はこの子に振り回された体験で、頭がいっぱいなのです。
この子も非生産的な葛藤で、頭がいっぱいなのです。
この非生産的な葛藤は、振りきらなければいけません。
そのための質問を、することは大切です。
その非生産的な葛藤を振りきるために、さらにプラスの方向に進む質問をしました。
それは家庭から、社会的な場である学校に奇跡を広めるのです。
カウンセラーはそのために、こう質問をしました。
「魔法があなたの学校にまで届いたら、あなたの学校での生活はどうなりますか?」
この子は、こう述べました。
「みんなと、仲良くする!!!」
さらにこの子は、こう付け加えました。
「嫌いな算数も、もっと分かる!」
カウンセラーは今までのこの子の話のまとめとして、こう述べました。
「魔法は家での生活も、学校での生活もすばらしいものにしてしまうのですね!」
この子は、微笑みました。
魔法の質問は、その役割をはたしたのです。
次に、母親に魔法の質問をします。
そこでこの子に、隣のおもちゃの部屋を紹介しました。
そのおもちゃの部屋で、母親と話をしているあいだにおもちゃで遊んでいるのです。
これには、二つの意味があります。
一つは母親に魔法の質問を、子供に妨げられることなく、答えてもらいたいからです。
もう一つはおもちゃで遊ぶことに、大きな意味があるからです。
おもちゃで遊ぶことは、自己表現です。
その自己表現に、大きな意味があるのです。
多くの場合、不登校や引きこもり状態にある人は自己表現が不得意です。
自分を表現できないのです。
子供の場合はその解決に、おもちゃで遊ぶ、遊戯療法を用います。
それにより、自己表現を身につけるのです。
あとはこのケースのような、親子面接において親とのみ話をする必要のある場合にも用いられます。ほんの少しの時間、遊戯療法で自己表現を身につけて、親子同席の面接に進みます。
次は母親と話をしました。
子供と同様、魔法の質問を進めたのです。
先ず「もし明日の朝に目がさめて、子供さんの困ったことが消えてなくなっていたら、そのことにどんなことから気付くでしょう?」と、質問したのです。
それに対して母親は、こう答えました。
「明日の朝、子供は私が起こさないでも、自分で起きますね。」
さらに母親は、こう続けました。
「そう自分で起きて、着がえも洗面も自分でしますね。」
母親がこう答えたので、カウンセラーは質問の方向を変えました。
「明日の朝、子供さんが自分で起きて、てきぱきとできたらお母さんは、どうなっているでしょう?」
それに対して、笑顔で答えました。
「私はその日は、いらいらしませんね!」
さらにこう続けました。
「それだけではなく、その日は家事も楽しくできます。」
母親がこう答えたので、カウンセラーは質問の方向をもとに戻しました。
「子供さんの前向きなことは、さらにどんなところに見つけられますか?」
その質問に母親は、こう続けました。
「食後に自分のはしと、茶わんも洗いますね。」
このように母親からも、魔法の質問とその答えを全て聞きました。
そこでまた、子供との3人の面接に戻ります。
ここからカウンセリングは、ハンドルを大きく切ります。
そのために、ぬいぐるみを用います。
その前にカウンセラーは、次のことを告げます。
「あなたは魔法によって、心地よくなれたのですね。」
ぬいぐるみを見せながら、次のように尋ねました。
「その心地よさに、ピッタリする動物はどれ?」
いくつかあるぬいぐるみの中から、小型犬のぬいぐるみを手に取りました。
とても愛らしく、ぬいぐるみを手に取りました。
この子は、そのまま話し始めました。
「あたし、こんな犬かってんだよ。」
「とっても、かわいいんだよ!」
いきいきとした目で、こう語りました。
カウンセラーは、そのいきいきとした目を見て安心しました。
いきいきとした目をさらに輝かすことができれば、良いのです。
しかし、少し口ごもってこう語りました。
「だけど家の犬、ぎょうぎ悪い事するんだよ。」
そして、少し沈黙しました。
「もしかしたら、ピッタリしないのかな?」
さらに、口ごもってこう語りました。
「どうなんだろう・・・」
その子の横にいた、母親はいらだちました。
そのいらだったふんいきは、部屋の中にただよいました。
母親はそのいらだったふんいきの中で、こう述べました。
「この子、何をやっても決められないんですよ。」
このいらだちと、この発言がこの子の問題の本質です。
ただしカウンセラーは状況を見て、それを慎重に扱うことが大切です。
それゆえにカウンセラーは、こう言いました。
「いいえ、ピッタリするものを大切にさがしたいのでしょうね。」
この子は、母親のいらだちの中で常に生活していたのです。
その悪循環をたつことも、カウンセリングの大きな役割です。
そのためにカウンセラーは、状況を常に見ています。
その状況の中で、その子をサポートしたのです。
それがカウンセラーの、前述のこの発言です。
「いいえ、ピッタリするものを大切にさがしたいのでしょうね。」
このようにカウンセラーは、その子をサポートしたのです。
態度での、カウンセリングと言えます。
この子にとって、敵ではなく自分のみかたができたのです。
これはとても大切です。
カウンセリングのプロセスは、自己確立のプロセスです。
そのためには、自分のみかたができることも大切です。
「いいえ、ピッタリするものを大切にさがしたいのでしょうね。」よってこの言葉の意味は、とても深いのです。
言葉の中に、態度でのカウンセリングは含まれていると言えます。
この子も、この言葉に救われました。
その助けにより、ピッタリするものをさがしあてました。
「ピッタリのあったよ!」
いきいきとした目をさらに輝かして、こう語りました。
そのさがしあてたものは、野ウサギでした。
ここからカウンセラーは、話の聞き役に回ります。
ひたすら話を聞きます。
その聞くこと、正確に言えば「聴くこと」により前に進みます。
「聴くこと」は、その人を自己理解に導きます。
この子は、野ウサギについてこう語りました。
「夏休みに、田舎にいったんだよ!」
さらに、こう述べました。
「そのときに野ウサギが、木の下から出てくるの見たよ!」
こう目を輝かせて、いいました。
子供も大人も、目の輝きこそがいのちです。
自分自身の心地よさに、ピッタリする動物も見つかりました。
あとはその心地よさを、記憶とぬいぐるみからこころの真ん中に定めていきます。
そして、野ウサギについてこう語りました。
「野ウサギは、木の下から出てきて周りを見わたしていたよ。」
さらに心地よさを、こころの真ん中に定めていくためにひたすら話を聴きます。
「次に、日向ぼっこしたよ。」
ここまでは、過去の事実を述べていました。
「とっても、楽しそうだったよ!」
ここから、この子は自分のこころの中を語り始めました。
「日向ぼっこしてみたいな~~」
「野ウサギみたいに木の下から出て、みたいな。」
この発言は、この子の今の自分の気持ちです。
「そして、日向ぼっこしたいな。」
こうやって、さらに自分のこころの中を語り始めました。
ピッタリしたものを、さがし出したのでしょう。
そこでカウンセラーは、カウンセリングを深めていくことにしました。
「野ウサギは、心地よさにピッタリみたいだね!」
この子は、大きくうなずきました。
この言葉は、この子の今の気持ちにピッタリだったのです。
ここから、カウンセリングは次のプロセスに入ります。
そのために、ぬいぐるみの野ウサギを用います。
子供に、野ウサギの役をやってもらうのです。
野ウサギになって、もらうのです。
そのために、カウンセラーはこう語ります。
「あなたに野ウサギになってもらって、お話ししたいの。」
ここからカウンセラーは、野ウサギに語りかけるのです。
そうやって、カウンセリングを深めます。
先ずカウンセラーはこう語りました。
「あなた(野ウサギ)は、何歳ですか?」
「二つです」こう答えました。
この答えにも、大きな意味は含まれています。
それは、きちんと野ウサギの年齢について答えています。
野ウサギを自分とは、異なるものと考えているのです。
そこでそれに基づいて、質問を進めました。
「お名前は?」
これは言いかえれば、「野ウサギに名前をつけてください」ということです。
この子の主体性を、導き出すための質問です。
この子は、「あっちゃん!」と答えました。
カウンセラーは「男の子? 女の子?」と、尋ねました。
それに対して、「敦子 女の子!」と答えました。
続けて「前田あっちゃん!」と元気よく答えました。
カウンセラーは、この子の元気を引き出したのです。
ここに新しいカウンセリングの、特徴があります。
新しいカウンセリングでは、そのプロセスの中で機関車を見つけるのです。
正確に言えば客車を引っ張る、機関車を見つけるのです。
その機関車にプロセスという客車を、引っ張ってもらいます。
この場合は、「前田あっちゃん」が機関車です。
「前田あっちゃん」が機関車になり、客車を引っ張るのです。
そのためにカウンセラーは、質問を続けます。
「なんで野ウサギの前田あっちゃんを好きなの?」
この質問により、さらに機関車に客車を引っ張ってもらいます。
「前田あっちゃんは、みんなのまん中にいつもいるから。」
前田あっちゃんは、機関車になる要素を持っています。これから、客車を引っ張ってもらえるでしょう。
「みんなのまん中にいつもいると、何がちがうの?」
前田あっちゃんの機関車になる要素を、引き出すための質問です。
「みんなのまん中にいつもいると、困ったことが起きないようにできるの。」
「そうなっても、すぐ何かしてあげられるの。」
「前田あっちゃんのようになりたいの!」
カウンセラーは、こう述べました。
「イエス!!!」
こう元気よく、答えました。
大きな答えは、引き出せました。
これからこの機関車に、客車を引っ張ってもらえるでしょう。
そのためにカウンセリングは、ここで母親を交えたものに方向を変えます。
「お母さん、とっても素直な良い子ですね!」
母親を交えた会話は、この言葉から始まりました。
新しいカウンセリングの実際のプロセスは、常に前向きです。
前に前にと歩んでいく、プロセスです。
そのために、さらに質問を続けます。
「前田あっちゃんのようになるために、いまあなたは何ができる?」
カウンセラーはこの子に、こう述べました。
この質問により、前に歩んでいくのです。
そのプロセスをともにすることが、カウンセリングです。
「ほんの少し、前田あっちゃんのように・・・」
無理のないように、『ほんの少し』と付け加えました。
この『ほんの少し』は、ポイントです。
大きな一歩よりも、無理のない『ほんの少し』を心掛けるべきです。
この子の無理のない『ほんの少し』の答えは、こうでした。
「わからない!」でした。
この「わからない!」は、とても大切です。
カウンセリングが保護された空間であるからこそ、そう言えたのです。
神経症的な傾向のある子供は、「わからない!」という言葉はとても荷の重い言葉です。その言葉を、言えたのです。
カウンセリングの保護された空間で、その言葉を使えるようになりました。
あとはこれを、広げていけば良いのです。
「わからない!」といったとき、みんなのまん中にいるのです。
みんなのまん中にいることは、自己主張が土台です。
自分でも気付かないうちに、人は変わっているものです。
これを自覚化することが、次のプロセスになります。
そのために、カウンセラーは母親にこう語りました。
「子供さんがセンターになれたと思えたら、それを伝えてください。」
「正確には子供さんに、いまあなたは前田あっちゃんになれた!」と、言ってください。
こうやって、自覚化することが大切です。
その自覚に基づいて、生活を組み立てていけば良いのです。
新しいカウンセリングは生活と、実践は表裏一体です。
カウンセリングと生活は、分離していません。
表裏一体の関係にあります。
さらに、述べます。
新しいカウンセリングの実際のプロセス、実践方法を述べます。
不登校、引きこもりの人は、自然な気持ちの流れが妨げられているのです。
よってカウンセリングを通して子供は、親の一面的な見かたから解放されることが大切です。
その結果、生産的な親子関係がスタートします。
その生産的な関係性の確立のための、カウンセリングの目標設定についてモデルにより述べます。
このモデルは、「子育てに自信の持てない母親」です。
「子育てに自信の持てない」という、きわめてカウンセリングの目標設定の困難なケースです。
新しいカウンセリングでは目標設定と、その母親のサポートを同時に行います。
この母親は「育児ノイローゼ」状態です。
子育てに絶望感を持っています。
このようなカウンセリングの目標設定の困難なケースを、モデルにより述べます。
小学校2年生の女の子と、その母親とのカウンセリングです。
この母親も、子供の問題行動からカウンセリングにきました。
問題行動は、カウンセリングに対する導きです。
その問題行動とは、「学校の先生の言うことを聞かない」というものです。
このことには母親も、困っていました。
この母親は、あまりにも子供が言うことを聞かないので自分に自信を失ってしまったのです。
その結果、「自分は母親失格かもしれないという考えに支配された」きわめて困難な状況にいました。
新しいカウンセリングの実際のプロセスは、より具体的な解決を目指します。
それゆえにカウンセラーは、こう質問しました。
「どんなことが起きたら、今日カウンセリングを受けてよかったと思えますか?」
それに対して母親は、「あまりにも子供が言うことを聞かない」と繰り返すのでした。
そして乳幼児のころからの、子供の困ったことを語りました。
まったく質問には、答えていません。正確には気持ちの混乱ゆえに、答えられないのです。
カウンセリングでは気持ちの混乱で質問に答えられないときは、そのまま話を続けます。
多くの場合、「質問に答えてください」とは言いません。これは話の流れを、質問の回答よりも、重視するからです。
そのためにカウンセラーは、話を聴く姿勢が大切です。
母親に対して理解を示しあたたかく、話を聴く姿勢が求められます。
カウンセラーが母親に対して理解を示し、あたたかく話を聴く姿勢を保つだけでも大きな効果はあります。その姿勢だけでも相手(母親)に、大きな変化をもたらします。
人は誰でも、理解を求めているのです。
それをカウンセリングでは、あたたかく話を聴く姿勢により相手に示します。
そのあたたかく話を聴く姿勢により、理解されたときに、その人は前向きな生き方に向かいます。
この母親も、そうでした。
ここまでの会話は、あたたかく話を聴く姿勢を相手に示すためのものです。
ここからカウンセリングの目標設定という、本題に入ります。
そのためにカウンセラーは、次のような質問をしました。
「娘さんが、お母さんの言うことを聞くようになったら、何がどのように変わりますか?」
それに対して、母親はこう答えました。
「考えられません。」
絶望感の強い人ほど、こう答えます。
そこでカウンセラーは、次のように語りました。
「先ほどのお話から、あなたをとても良いお母さんだとおもいました。」
この言葉により、真に相手を尊重するのです。
真に相手を尊重することにより、絶望から相手を引っ張りあげるのです。
母親は、この言葉に微笑みました。
考えも、なめらかに進んでいるようです。
そして、母親はこう答えました。
「娘は私を、もっとお母さんとしてフレンドリーに対応するでしょう。」
さらに続けて、こう述べました。
「私は娘に、もっと母親らしく対応するでしょう。」
母親は自分と娘がそれぞれ母らしく、娘らしく生きられると述べています。
そこでカウンセラーは、それを次のような質問により具体化します。
「そうなったら、具体的にどうしますか?」
それに対して、母親はこう答えました。
「もっと、娘に微笑みます。」
カウンセラーは、それをより具体化するために次の質問をしました。
「娘さんに微笑んだら、娘さんはどのようにいまと変わりますか?」
母親はこう答えました。
「娘はソフトに、微笑み返します。」
「そうやって私達は、フレンドリーになっていきます。」
「・・・・・・・・そう、私達に信頼感が育まれるでしょう。」
母親にとってフレンドリーになることは、信頼感が育まれることとほぼイコールです。
カウンセラーは、それを視点をかえるために次の質問をしました。
「信頼感が育まれたらお母さんと、娘さんはどのようにいまと変わりますか?」
母親は少し考えて、次のように答えました。
「もっと自信が持てるでしょう。」
それに続けて、母親はこう延べました。
「娘は、もっと自分に自信が持てるでしょう。」
「娘は、自信がないのでしょう。」
「だから、破壊的になるんでしょう・・・」
多くの場合、自分に対する自信の弱さは破壊的な行動に至ります。
言いかえれば生きられなさは、自信の弱さにゆらいします。
自信がないから、「やけの、やんぱち」なのです。
すべて投げやりなのです。
このような大きな、一つの結論に達したのです。
カウンセリングの、大きな一つの節目です。
このケースでも一つの結論、大きな一つの節目に至るようにカウンセリングは行われました。
それはもともと可能性として、この母親の中にあるものです。
可能性として、母親の中にあるものを開示することも大切です。
それと同時に母親と子供の、橋渡しも必要です。
この橋渡しには、一つの質問が有効です。
それは橋渡しを視覚化して、スムーズなものにします。
子供用に、少しアニメのような要素もあります。
それは魔法の杖を使う、質問です。
その魔法の杖を使う質問を、子供にしました。
それは、次のようなものでした。
「ここに魔法の杖が、あります。」
「魔法によりどんな望みも、かなえることのできる杖です。」
こうやって、子供に視覚イメージを与えます。
「お母さんもともに、魔法の杖を使いましょう。」
この言葉により母親も、視覚イメージによる解決に参加するのです。
子供のカウンセリングでは、家族の参加はとても大切です。
そもそも子供の不登校や引きこもりは、家庭生活がスムーズに進まないことが原因です。
それがスムーズに進むための、助走がカウンセリングです。
それは走り幅跳びの、助走と同じです。
カウンセリングという助走をつけて、家庭生活をスムーズに跳ぶのです。
この「お母さんもともに、魔法の杖を使いましょう」という言葉に
続けて、魔法のお話はスタートします。
「この魔法の杖は、どんな望みもかなえてくれます。」
「魔法の杖を、いまから振ります。」
そうやって、魔法の杖を振るしぐさをします。
ここから、本題に入っていきます。
その魔法の杖を振るしぐさと同時に、相談者は魔法のストーリーの中に入るのです。
ストーリーは、こうスタートします。
「この魔法の杖は、どんな望みもかなえてくれます。」
「もし明日の朝に目がさめて、あなたがいま話した嫌なことが消えてなくなっていたら、そのことにどんなことから気付くでしょう?」
このように先ず解決像を、示すのです。
そこから解決を、さかのぼっていくのです。
その解決像に対する、子供の回答は次のものです。
「ぜんぜん、わからない・・・」
これに対して隣にいた母親はいらだち、こう述べました。
「分からないわけ、ないでしょ!!!」
この母親の言葉の中に、子供の問題行動の原因は潜んでいます。
感情的な対応こそが、その原因です。
感情的ないらだちは、子供の不安をうみます。
その結果、悪循環に入るのです。
そこでカウンセラーは母親のいらだちによる、子供の不安を静めるためにこう述べました。
「わからなくて、いいんですよ。」
この言葉により、子供は安心しました。
カウンセリングでは多くの場合、安心感を与えればそれだけでOKです。
これは大きな体験です。
その体験に背中を押されて、前に進むのです。
この子も「わからなくて、いいんですよ」という言葉に背中を押されて、前に進みました。
小さなことですが、これだけでも大切なカウンセリングです。
続けて、次のように述べました。
「カーテンを開けて、そとを見る。」
これは「もし明日の朝に目がさめて、あなたがいま話した嫌なことが消えてなくなっていたら、そのことにどんなことから気付くでしょう?」という質問に直接、答えていません。
これに対して隣にいた母親はいらだったかもしれませんが、何も言いませんでした。
これはとても、意味のあることです。
母親も先ほどのカウンセラーの、「わからなくて、いいんですよ」という言葉から、子供とともに安心を実感していたのです。このようにカウンセリングでは、安心感を与えればそれだけでOKであることは多いのです。
その安心感のもとに、この子は語りました。
「明日の朝に目がさめたら、買いたかったCDがあるかなと・・・思います。」
それに対して、カウンセラーは微笑みました。
イエスと、相手を肯定するジェスチャーです。
その微笑みのジェスチャーのもとに、さらにこの子は語りました。
「それに明日の朝、みんなで楽しくご飯を食べられる・・・」
これは多くの不登校や引きこもり状態にある人の、望みです。素直な気持ちです。
これを引き出せただけでも、大きな効果はあります。
カウンセラーはさらに、その望みを広め深めなければいけません。
そのために、次の質問をしました。
「みんなで楽しくご飯を食べられたら、あなたはどんな気持ちになるの?」
「どうかな?」
その質問に、この子は語りました。
「朝から、すごく気ぶんがいい!!!」
カウンセラーはさらに、カウンセリングを横に広めるために、次の質問をしました。
「あなたはいつも、気ぶんがいいとき何をしているの?」
この子は、こう述べました。
「妹と、仲良く遊んでる!!!」
この子は気ぶんもいいときは、「妹と仲良く遊んでる」のです。
そのことを本人も母親も知ってはいますが、じゅうぶんに気付いていないのです。
すなわち母親はこの子に振り回された体験で、頭がいっぱいなのです。
この子も非生産的な葛藤で、頭がいっぱいなのです。
この非生産的な葛藤は、振りきらなければいけません。
そのための質問を、することは大切です。
その非生産的な葛藤を振りきるために、さらにプラスの方向に進む質問をしました。
それは家庭から、社会的な場である学校に奇跡を広めるのです。
カウンセラーはそのために、こう質問をしました。
「魔法があなたの学校にまで届いたら、あなたの学校での生活はどうなりますか?」
この子は、こう述べました。
「みんなと、仲良くする!!!」
さらにこの子は、こう付け加えました。
「嫌いな算数も、もっと分かる!」
カウンセラーは今までのこの子の話のまとめとして、こう述べました。
「魔法は家での生活も、学校での生活もすばらしいものにしてしまうのですね!」
この子は、微笑みました。
魔法の質問は、その役割をはたしたのです。
次に、母親に魔法の質問をします。
そこでこの子に、隣のおもちゃの部屋を紹介しました。
そのおもちゃの部屋で、母親と話をしているあいだにおもちゃで遊んでいるのです。
これには、二つの意味があります。
一つは母親に魔法の質問を、子供に妨げられることなく、答えてもらいたいからです。
もう一つはおもちゃで遊ぶことに、大きな意味があるからです。
おもちゃで遊ぶことは、自己表現です。
その自己表現に、大きな意味があるのです。
多くの場合、不登校や引きこもり状態にある人は自己表現が不得意です。
自分を表現できないのです。
子供の場合はその解決に、おもちゃで遊ぶ、遊戯療法を用います。
それにより、自己表現を身につけるのです。
あとはこのケースのような、親子面接において親とのみ話をする必要のある場合にも用いられます。ほんの少しの時間、遊戯療法で自己表現を身につけて、親子同席の面接に進みます。
次は母親と話をしました。
子供と同様、魔法の質問を進めたのです。
先ず「もし明日の朝に目がさめて、子供さんの困ったことが消えてなくなっていたら、そのことにどんなことから気付くでしょう?」と、質問したのです。
それに対して母親は、こう答えました。
「明日の朝、子供は私が起こさないでも、自分で起きますね。」
さらに母親は、こう続けました。
「そう自分で起きて、着がえも洗面も自分でしますね。」
母親がこう答えたので、カウンセラーは質問の方向を変えました。
「明日の朝、子供さんが自分で起きて、てきぱきとできたらお母さんは、どうなっているでしょう?」
それに対して、笑顔で答えました。
「私はその日は、いらいらしませんね!」
さらにこう続けました。
「それだけではなく、その日は家事も楽しくできます。」
母親がこう答えたので、カウンセラーは質問の方向をもとに戻しました。
「子供さんの前向きなことは、さらにどんなところに見つけられますか?」
その質問に母親は、こう続けました。
「食後に自分のはしと、茶わんも洗いますね。」
このように母親からも、魔法の質問とその答えを全て聞きました。
そこでまた、子供との3人の面接に戻ります。
ここからカウンセリングは、ハンドルを大きく切ります。
そのために、ぬいぐるみを用います。
その前にカウンセラーは、次のことを告げます。
「あなたは魔法によって、心地よくなれたのですね。」
ぬいぐるみを見せながら、次のように尋ねました。
「その心地よさに、ピッタリする動物はどれ?」
いくつかあるぬいぐるみの中から、小型犬のぬいぐるみを手に取りました。
とても愛らしく、ぬいぐるみを手に取りました。
この子は、そのまま話し始めました。
「あたし、こんな犬かってんだよ。」
「とっても、かわいいんだよ!」
いきいきとした目で、こう語りました。
カウンセラーは、そのいきいきとした目を見て安心しました。
いきいきとした目をさらに輝かすことができれば、良いのです。
しかし、少し口ごもってこう語りました。
「だけど家の犬、ぎょうぎ悪い事するんだよ。」
そして、少し沈黙しました。
「もしかしたら、ピッタリしないのかな?」
さらに、口ごもってこう語りました。
「どうなんだろう・・・」
その子の横にいた、母親はいらだちました。
そのいらだったふんいきは、部屋の中にただよいました。
母親はそのいらだったふんいきの中で、こう述べました。
「この子、何をやっても決められないんですよ。」
このいらだちと、この発言がこの子の問題の本質です。
ただしカウンセラーは状況を見て、それを慎重に扱うことが大切です。
それゆえにカウンセラーは、こう言いました。
「いいえ、ピッタリするものを大切にさがしたいのでしょうね。」
この子は、母親のいらだちの中で常に生活していたのです。
その悪循環をたつことも、カウンセリングの大きな役割です。
そのためにカウンセラーは、状況を常に見ています。
その状況の中で、その子をサポートしたのです。
それがカウンセラーの、前述のこの発言です。
「いいえ、ピッタリするものを大切にさがしたいのでしょうね。」
このようにカウンセラーは、その子をサポートしたのです。
態度での、カウンセリングと言えます。
この子にとって、敵ではなく自分のみかたができたのです。
これはとても大切です。
カウンセリングのプロセスは、自己確立のプロセスです。
そのためには、自分のみかたができることも大切です。
「いいえ、ピッタリするものを大切にさがしたいのでしょうね。」よってこの言葉の意味は、とても深いのです。
言葉の中に、態度でのカウンセリングは含まれていると言えます。
この子も、この言葉に救われました。
その助けにより、ピッタリするものをさがしあてました。
「ピッタリのあったよ!」
いきいきとした目をさらに輝かして、こう語りました。
そのさがしあてたものは、野ウサギでした。
ここからカウンセラーは、話の聞き役に回ります。
ひたすら話を聞きます。
その聞くこと、正確に言えば「聴くこと」により前に進みます。
「聴くこと」は、その人を自己理解に導きます。
この子は、野ウサギについてこう語りました。
「夏休みに、田舎にいったんだよ!」
さらに、こう述べました。
「そのときに野ウサギが、木の下から出てくるの見たよ!」
こう目を輝かせて、いいました。
子供も大人も、目の輝きこそがいのちです。
自分自身の心地よさに、ピッタリする動物も見つかりました。
あとはその心地よさを、記憶とぬいぐるみからこころの真ん中に定めていきます。
そして、野ウサギについてこう語りました。
「野ウサギは、木の下から出てきて周りを見わたしていたよ。」
さらに心地よさを、こころの真ん中に定めていくためにひたすら話を聴きます。
「次に、日向ぼっこしたよ。」
ここまでは、過去の事実を述べていました。
「とっても、楽しそうだったよ!」
ここから、この子は自分のこころの中を語り始めました。
「日向ぼっこしてみたいな~~」
「野ウサギみたいに木の下から出て、みたいな。」
この発言は、この子の今の自分の気持ちです。
「そして、日向ぼっこしたいな。」
こうやって、さらに自分のこころの中を語り始めました。
ピッタリしたものを、さがし出したのでしょう。
そこでカウンセラーは、カウンセリングを深めていくことにしました。
「野ウサギは、心地よさにピッタリみたいだね!」
この子は、大きくうなずきました。
この言葉は、この子の今の気持ちにピッタリだったのです。
ここから、カウンセリングは次のプロセスに入ります。
そのために、ぬいぐるみの野ウサギを用います。
子供に、野ウサギの役をやってもらうのです。
野ウサギになって、もらうのです。
そのために、カウンセラーはこう語ります。
「あなたに野ウサギになってもらって、お話ししたいの。」
ここからカウンセラーは、野ウサギに語りかけるのです。
そうやって、カウンセリングを深めます。
先ずカウンセラーはこう語りました。
「あなた(野ウサギ)は、何歳ですか?」
「二つです」こう答えました。
この答えにも、大きな意味は含まれています。
それは、きちんと野ウサギの年齢について答えています。
野ウサギを自分とは、異なるものと考えているのです。
そこでそれに基づいて、質問を進めました。
「お名前は?」
これは言いかえれば、「野ウサギに名前をつけてください」ということです。
この子の主体性を、導き出すための質問です。
この子は、「あっちゃん!」と答えました。
カウンセラーは「男の子? 女の子?」と、尋ねました。
それに対して、「敦子 女の子!」と答えました。
続けて「前田あっちゃん!」と元気よく答えました。
カウンセラーは、この子の元気を引き出したのです。
ここに新しいカウンセリングの、特徴があります。
新しいカウンセリングでは、そのプロセスの中で機関車を見つけるのです。
正確に言えば客車を引っ張る、機関車を見つけるのです。
その機関車にプロセスという客車を、引っ張ってもらいます。
この場合は、「前田あっちゃん」が機関車です。
「前田あっちゃん」が機関車になり、客車を引っ張るのです。
そのためにカウンセラーは、質問を続けます。
「なんで野ウサギの前田あっちゃんを好きなの?」
この質問により、さらに機関車に客車を引っ張ってもらいます。
「前田あっちゃんは、みんなのまん中にいつもいるから。」
前田あっちゃんは、機関車になる要素を持っています。これから、客車を引っ張ってもらえるでしょう。
「みんなのまん中にいつもいると、何がちがうの?」
前田あっちゃんの機関車になる要素を、引き出すための質問です。
「みんなのまん中にいつもいると、困ったことが起きないようにできるの。」
「そうなっても、すぐ何かしてあげられるの。」
「前田あっちゃんのようになりたいの!」
カウンセラーは、こう述べました。
「イエス!!!」
こう元気よく、答えました。
大きな答えは、引き出せました。
これからこの機関車に、客車を引っ張ってもらえるでしょう。
そのためにカウンセリングは、ここで母親を交えたものに方向を変えます。
「お母さん、とっても素直な良い子ですね!」
母親を交えた会話は、この言葉から始まりました。
新しいカウンセリングの実際のプロセスは、常に前向きです。
前に前にと歩んでいく、プロセスです。
そのために、さらに質問を続けます。
「前田あっちゃんのようになるために、いまあなたは何ができる?」
カウンセラーはこの子に、こう述べました。
この質問により、前に歩んでいくのです。
そのプロセスをともにすることが、カウンセリングです。
「ほんの少し、前田あっちゃんのように・・・」
無理のないように、『ほんの少し』と付け加えました。
この『ほんの少し』は、ポイントです。
大きな一歩よりも、無理のない『ほんの少し』を心掛けるべきです。
この子の無理のない『ほんの少し』の答えは、こうでした。
「わからない!」でした。
この「わからない!」は、とても大切です。
カウンセリングが保護された空間であるからこそ、そう言えたのです。
神経症的な傾向のある子供は、「わからない!」という言葉はとても荷の重い言葉です。その言葉を、言えたのです。
カウンセリングの保護された空間で、その言葉を使えるようになりました。
あとはこれを、広げていけば良いのです。
「わからない!」といったとき、みんなのまん中にいるのです。
みんなのまん中にいることは、自己主張が土台です。
自分でも気付かないうちに、人は変わっているものです。
これを自覚化することが、次のプロセスになります。
そのために、カウンセラーは母親にこう語りました。
「子供さんがセンターになれたと思えたら、それを伝えてください。」
「正確には子供さんに、いまあなたは前田あっちゃんになれた!」と、言ってください。
こうやって、自覚化することが大切です。
その自覚に基づいて、生活を組み立てていけば良いのです。
新しいカウンセリングは生活と、実践は表裏一体です。
カウンセリングと生活は、分離していません。
表裏一体の関係にあります。
さらに、述べます。